保険学雑誌 第594号 2006年(平成18年)9月
わが国公的介護保険制度の現状と課題
―「福祉契約の視点」を中心に―
久保田 治助
■アブストラクト
第三分野として介護保険商品が注目されるようになって久しい。しかし,今回の改正介護保険法によって,公的介護保険制度がどのように実施されていくのかについてはいまだ模索中であるといえる。このような介護保険法であるが,介護保険の契約関係については保険契約ではなく福祉契約と区別されて呼ばれている。しかし,この福祉契約の内実が保険学,特に私保険において浸透しているとはいえない。そこで,この福祉契約とはいかなるものであるのかを,介護保険制度の現状と課題を踏まえつつ探っていきたい。
■キーワード
介護保険,福祉契約,社会保障
■本 文
『保険学雑誌』第594号 2006年(平成18年)9月, pp. 1 − 20
EVA による企業価値評価
―損害保険業態をモデルとした分析―
岩瀬 泰弘
■アブストラクト
損害保険業態はオペレーションとファイナンスが複雑に絡み合った業態である。そのため企業価値についても保険引受による価値創造と,投資による価値創造の両面をみる必要がある。本稿では,EVA による株主価値が「0(ゼロ)」になるROE から逆説的に求めた最低必要資本を種々の分析に利用した。
保険引受による価値創造については,保険引受収益とは非常に強い相関関係があるが,増収率や損害率についてはそれほど強い相関関係は見られない。又,責任準備金の理論値と実勢値との比較を行ったところ,理論値の減少が実勢値の減少よりも激しいことが分かる。一方,投資戦略による価値創造については,総資産に占める有価証券の割合とはマイナスの相関関係にある。これは,損害保険業態が高い金融市場リスクを取ることにより発生したリターンは,株主にとっては必ずしも価値を創造するものにはならないことを意味する。
保険引受による価値創造については,保険引受収益とは非常に強い相関関係があるが,増収率や損害率についてはそれほど強い相関関係は見られない。又,責任準備金の理論値と実勢値との比較を行ったところ,理論値の減少が実勢値の減少よりも激しいことが分かる。一方,投資戦略による価値創造については,総資産に占める有価証券の割合とはマイナスの相関関係にある。これは,損害保険業態が高い金融市場リスクを取ることにより発生したリターンは,株主にとっては必ずしも価値を創造するものにはならないことを意味する。
■キーワード
企業価値,EVA,最低必要資本
■本 文
『保険学雑誌』第594号 2006年(平成18年)9月, pp. 21 − 40
クライシスマネジメントについての一考察
平澤 敦
■アブストラクト
クライシスマネジメント(crisis management)という言葉は,キューバ危機後,当時のKennedy政権の国防長官であったRobert McNamaraの演説の中ではじめて用いられたといわれている。それを機に,クライシスマネジメントは国際政治学の中でも,特に軍事分野においてその体系的な研究がまず進められた。その後,冷戦構造の終結により,クライシスマネジメントの手法は災害対策や企業分野等においても用いられるようになった。
クライシスマネジメントの本質は,クライシス(crisis)が発生したときの被害局限措置であるが,広義の意味では,クライシスを予測し,予防策を講じ,それが発生した場合には,被害を最小限にとどめ,復旧を試み,再発防止に取り組むプロセスと理解されている。
クライシスマネジメントの本質は,クライシス(crisis)が発生したときの被害局限措置であるが,広義の意味では,クライシスを予測し,予防策を講じ,それが発生した場合には,被害を最小限にとどめ,復旧を試み,再発防止に取り組むプロセスと理解されている。
■キーワード
クライシス,クライシスマネジメント,ICS
■本 文
『保険学雑誌』第594号 2006年(平成18年)9月, pp. 41 − 60